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監禁願望の女
第10章 監禁生活Ⅰ
***
男は弥生の返事を聞くと、手首の縄を掴み、彼女を立たせ、廊下の脇へ体を向けた。
かんざしを持つ指が、目の前にある引き戸の窪みへ掛かる。
ことり、と戸が横へ滑った。
開いた先にあったのは、二人で入れば、それだけで埋まってしまいそうな脱衣所だった。
黒い漆喰の壁。頭上には、長い年月を吸い込んだ太い梁が渡されている。黒褐色の板床は廊下からそのまま続き、正面の曇り窓から差し込む淡い朝の光を、鈍く映していた。
右手の壁際には、黒い空間から浮かび上がるように、白木の洗面台が置かれている。その上には小さな鏡。反対側には古びた木の棚があり、籐の籠と、折り畳まれた白いタオルが収められていた。
生活の匂いは、どこにもなかった。
男が用意したものだけが、必要な場所へ整然と置かれている。
その奥には、もう一枚の引き戸が見えた。隙間から湿り気を帯びた暖かな空気が流れ込み、下ろされた弥生の髪を、裸の肩へそっと貼りつかせる。
あの向こうが、浴室――。
縛られた両手首が、縄の中でわずかに動いた。
灯りは点いていなかった。それでも、曇り窓を透けた朝の光が、狭い脱衣所の隅まで届いていた。
男は弥生の返事を聞くと、手首の縄を掴み、彼女を立たせ、廊下の脇へ体を向けた。
かんざしを持つ指が、目の前にある引き戸の窪みへ掛かる。
ことり、と戸が横へ滑った。
開いた先にあったのは、二人で入れば、それだけで埋まってしまいそうな脱衣所だった。
黒い漆喰の壁。頭上には、長い年月を吸い込んだ太い梁が渡されている。黒褐色の板床は廊下からそのまま続き、正面の曇り窓から差し込む淡い朝の光を、鈍く映していた。
右手の壁際には、黒い空間から浮かび上がるように、白木の洗面台が置かれている。その上には小さな鏡。反対側には古びた木の棚があり、籐の籠と、折り畳まれた白いタオルが収められていた。
生活の匂いは、どこにもなかった。
男が用意したものだけが、必要な場所へ整然と置かれている。
その奥には、もう一枚の引き戸が見えた。隙間から湿り気を帯びた暖かな空気が流れ込み、下ろされた弥生の髪を、裸の肩へそっと貼りつかせる。
あの向こうが、浴室――。
縛られた両手首が、縄の中でわずかに動いた。
灯りは点いていなかった。それでも、曇り窓を透けた朝の光が、狭い脱衣所の隅まで届いていた。

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