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監禁願望の女
第10章 監禁生活Ⅰ
男は手にしていたかんざしを、戸口に近い棚へ置いた。
「さあ……」
下ろされた髪の上から、大きな手のひらが弥生の背中へ添えられる。
ほんの少し、前へ押された。
弥生は縛られた両手を体の前へ揃えたまま、敷居を越える。裸の足が黒褐色の板床へ触れ、もう片方の足も、その後へ続いた。
右手に小さな鏡があることには、戸が開いたときから気づいていた。
見ないようにしよう――。
鏡の前を通り過ぎるだけ。
そう思っていた。
けれど、白木の洗面台へ近づくにつれ、視線が少しずつ右へ引かれていく。顔を正面へ向けているつもりなのに、鏡の中に映る自分の横姿が、視界の端から離れなかった。
とうとう、目を向けてしまう。
かんざしを抜かれた髪が、肩から背中へ乱れたまま流れ落ちていた。その隙間から覗く横顔は、自分で思っていたよりも赤い。頬だけではない。伏せた睫毛の下も、先ほど噛んだ下唇も、まだ男の前で熱を持っているように見えた。
視線が、そこからゆっくりと下がっていく。
鏡の中では、横を向いた胸が浅い呼吸に合わせて上下していた。その膨らみを囲むように、消えきらない赤い縄の痕が走っている。二の腕にも幾筋もの縄目が残り、その先では、再び一つにされた両手首が麻縄にきつく縛られていた。
「さあ……」
下ろされた髪の上から、大きな手のひらが弥生の背中へ添えられる。
ほんの少し、前へ押された。
弥生は縛られた両手を体の前へ揃えたまま、敷居を越える。裸の足が黒褐色の板床へ触れ、もう片方の足も、その後へ続いた。
右手に小さな鏡があることには、戸が開いたときから気づいていた。
見ないようにしよう――。
鏡の前を通り過ぎるだけ。
そう思っていた。
けれど、白木の洗面台へ近づくにつれ、視線が少しずつ右へ引かれていく。顔を正面へ向けているつもりなのに、鏡の中に映る自分の横姿が、視界の端から離れなかった。
とうとう、目を向けてしまう。
かんざしを抜かれた髪が、肩から背中へ乱れたまま流れ落ちていた。その隙間から覗く横顔は、自分で思っていたよりも赤い。頬だけではない。伏せた睫毛の下も、先ほど噛んだ下唇も、まだ男の前で熱を持っているように見えた。
視線が、そこからゆっくりと下がっていく。
鏡の中では、横を向いた胸が浅い呼吸に合わせて上下していた。その膨らみを囲むように、消えきらない赤い縄の痕が走っている。二の腕にも幾筋もの縄目が残り、その先では、再び一つにされた両手首が麻縄にきつく縛られていた。

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