この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
監禁願望の女
第3章 最初の女
弥生は浅い息を継ぎ、そっと呟いた。
「でも……手遅れですよね……?」
男はふっと笑い、囲炉裏越しに弥生を見つめた。そして、すぐに新たな薪を一本手に取り、育ち始めた火へ静かにくべた。
「誘拐ごっこなら、以前にもした。だが、ここまで連れてこようと本気で思ったのは、君が初めてだ」
弥生の手首が止まった。
背後で重ねられた両手は、解けるはずもないリボンの内側で固く強張っていた。
「君が初めてだ」という言葉が、囲炉裏の炎よりも遅く、胸の奥へ広がっていく。
自分より前にも、この男に自由を預けた女がいた。その事実には、奇妙な安堵があった。少なくとも、男は初めてではない。けれど、その女たちはここまで連れてこられなかった。どこまでを「ごっこ」として終え、どこからを「本気」と呼んでいるのか、弥生には分からなかった。
分からないまま、自分だけがその境を越えていた。
男は細くなった薪の先を炎の中へ差し入れた。火の粉が弾け、黒く煤けた梁へ吸い込まれるように消えていく。
「まだ間に合うかもしれないぞ」
弥生は顔を上げた。
帰してほしいと言えば、本当に帰してくれるのだろうか。
「でも……手遅れですよね……?」
男はふっと笑い、囲炉裏越しに弥生を見つめた。そして、すぐに新たな薪を一本手に取り、育ち始めた火へ静かにくべた。
「誘拐ごっこなら、以前にもした。だが、ここまで連れてこようと本気で思ったのは、君が初めてだ」
弥生の手首が止まった。
背後で重ねられた両手は、解けるはずもないリボンの内側で固く強張っていた。
「君が初めてだ」という言葉が、囲炉裏の炎よりも遅く、胸の奥へ広がっていく。
自分より前にも、この男に自由を預けた女がいた。その事実には、奇妙な安堵があった。少なくとも、男は初めてではない。けれど、その女たちはここまで連れてこられなかった。どこまでを「ごっこ」として終え、どこからを「本気」と呼んでいるのか、弥生には分からなかった。
分からないまま、自分だけがその境を越えていた。
男は細くなった薪の先を炎の中へ差し入れた。火の粉が弾け、黒く煤けた梁へ吸い込まれるように消えていく。
「まだ間に合うかもしれないぞ」
弥生は顔を上げた。
帰してほしいと言えば、本当に帰してくれるのだろうか。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


