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監禁願望の女
第3章 最初の女
そう尋ねようとして、唇がわずかに開いた。けれど、声にはならなかった。帰れると言われたら、自分はどうするのか。その答えを考えた途端、胸の奥が息苦しくなった。
帰りたいと口にすれば、この夜は終わる。背中のリボンを解かれ、あの黒い車に乗せられ、元の生活へ戻される。風呂上がりのリビングも、白湯の入ったカップも、何度も開いたスマホの画面も、そのまま自分を待っている。
そこまで思い浮かべても、弥生の口から帰りたいという言葉は出なかった。
男は返事を求めなかった。
お互いを理解するには、時間が必要だな」
それだけ言うと、男は囲炉裏へ視線を戻した。
弥生へ近づこうとはしなかった。拘束の具合を確かめることも、怯えた顔を覗き込むこともない。炎が弱まれば薪の位置を直し、火が育てば黙って見つめている。まるで、この部屋に弥生がいないかのようだった。
すぐに何かをされると思っていた。車へ乗ったときから、ずっと身構えていた。ドアがロックされた瞬間も、黒いリボンが飛んできた瞬間も、目と口を塞がれた瞬間も、その次に何が起こるのかを考え続けていた。ここへ運び込まれ、目隠しを外されてからは、いよいよ逃れられない何かが始まるのだと思っていた。
それなのに男は、何もしなかった。
帰りたいと口にすれば、この夜は終わる。背中のリボンを解かれ、あの黒い車に乗せられ、元の生活へ戻される。風呂上がりのリビングも、白湯の入ったカップも、何度も開いたスマホの画面も、そのまま自分を待っている。
そこまで思い浮かべても、弥生の口から帰りたいという言葉は出なかった。
男は返事を求めなかった。
お互いを理解するには、時間が必要だな」
それだけ言うと、男は囲炉裏へ視線を戻した。
弥生へ近づこうとはしなかった。拘束の具合を確かめることも、怯えた顔を覗き込むこともない。炎が弱まれば薪の位置を直し、火が育てば黙って見つめている。まるで、この部屋に弥生がいないかのようだった。
すぐに何かをされると思っていた。車へ乗ったときから、ずっと身構えていた。ドアがロックされた瞬間も、黒いリボンが飛んできた瞬間も、目と口を塞がれた瞬間も、その次に何が起こるのかを考え続けていた。ここへ運び込まれ、目隠しを外されてからは、いよいよ逃れられない何かが始まるのだと思っていた。
それなのに男は、何もしなかった。

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