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監禁願望の女
第5章 牢
***

怖かった――。

弥生は石段の方角を見つめたまま、何度も浅い息を繰り返していた。目を閉じれば何かが近づいてくるような気がして、何も見えないと分かっていても、暗闇の中で目を開けていた。

また扉が開くのではないか。
男がすぐに戻ってきて、今度は何をされるのだろう。

そんなことばかりが頭に浮かび、胸の奥で膨らんだ恐怖が、吐き出す場所を求めるように喉元までせり上がってきた。けれど、口の中に押し込まれた白い布の結び目が、声に変わろうとする息をすべて押し戻していた。

男の足音は聞こえなかった。

しばらく耳を澄ませていても、隠し扉の向こうから物音がすることはなかった。もう、ここには誰もいない。

そう思った瞬間、弥生の肩から少しだけ力が抜けた。

やっと一人になれた――。

自分を牢へ閉じ込めた男がいなくなった。そのことに安心するのは、どこかおかしいようにも思えた。それでも今は、あの目で見つめられずに済む。男の前で何かを求められることも、次の命令を待つこともない。怯えた顔を隠す必要もなかった。

弥生はようやく目を閉じた。暗闇の中で自分から瞼を閉ざすと、ほんの少しだけ男の視線から隠れられた気がした。誰にも見られていないと思うだけで、張り詰めていた息が鼻から長く漏れていった。
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