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素敵な笑顔
第4章 詩 記憶:温泉旅行
まだあたしがこの世に存在していなかったころ、
今よりずっと若くて元気だったおばあちゃんは、
魂の形が変わってしまうほどの激しい恋に身を焦がし、
やがてそれは引き裂かれるような悲しい終焉を迎えた。
らしい……
だれも教えてくれないから、ただの想像。
ずっと前からヒントはあったのに、
考えもしなかった。
まさかおばあちおゃんが……
あまり気に留めていなくて、
すっかりと記憶置き場の隅っこに追いやっていた。
あたしは十歳くらいだったと思う。
中学生にはなっていなかった。
どういう経緯があったのか忘れてしまったけど、
あたしはおばあちゃんと泊まりがけで温泉旅行に行った。
そのころ、おばあちゃんのことはよく知らなくて、
なにもしゃべることが思いつかずに、
行きの移動中はずっとぎくしゃくしていた。
永遠に夏が終わらないような気がしていた九月。
容赦ない太陽と、
電車の座席のえんじ色を妙に覚えている。
もう十五年も前のことだ。

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