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素敵な笑顔
第4章 詩 記憶:温泉旅行
 あたしはまだ怖いものを知らない、
無知で愚かな小娘だった。
願いは必ず叶うと信じていたし、
思い通りにいかないことなんかひとつもないって思っていた。
傲慢にも。
実際には、思い通りにいくことなんか、
ひとつもないのに。

 思い出してみようとすると、
案外忘れていないものだ。
宿に着き、おばあちゃんが記帳して、
部屋に案内された。
ずいぶんとくたびれた部屋だった。
セピアの記憶のように、全体的に色褪せていた。
でもそれ以上の印象が残っていないのは、
別のところに興味が向いていたからだ。
あたしは全身の神経を尖らせて、
幽霊の気配を探っていた。
部屋の隅の暗がりとか床の間の掛け軸とか。
もしかして、窓の外からこっちを見ていないか、とか。
美香ちゃんが、ここがお化けの出る宿だって教えてくれたから。
それがうそだったのかほんとうのことなのか、
よくわからない。
ほんとうだったとしても、
どうせあたしには見えないのだから、
もうどっちでもいいんだけど。
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