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素敵な笑顔
第17章 音 キス
「怖いならもっとこっちきていいよ」

「え?」

 詩子さんは早口だったしそっぽを向いたままだったけど、
言われた言葉はちゃんと聞こえていた。
ただ、理解が追いつかなかった。

「怖いんでしょう? 
もっとこっち来なさいよ」

「あ、え?
あの…… え?」

 あっちいきなさいって感じの突き放した口調で、
不機嫌そうに、こっちきなさい、
なんて、頭が混乱する。

「何回同じこと言わせる気?」

「す、すみま…… 
あ、いえ、はい……」

 謝るなってさっき言われたばかりだと思い出して、
しどろもどろになる。
もっとこっちにこいって言われたのよね、
と自問しながら、おずおずと体を寄せる。
たぶん詩子さんもこっちに体を寄せてきて、
思いがけずに肩が触れ合ってしまって。

 咄嗟に謝りそうになって、
唾液と一緒にぐっと言葉を飲み込んだ。
ごくって喉が鳴ったのが詩子さんに聞こえたかも。
わたしなんかが詩子さんに触れちゃいけない、
という気持ちに襲われる。
禁忌を破ってしまったような。
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