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素敵な笑顔
第19章 音 素敵なひと
せっかく、せっかくいい雰囲気だったのに、
台無しにされてしまった。
わたしは、恥ずかしながら、
さっきの続きをして欲しくて堪らなかった。
そのことばかり考えていた。
頭から離れなかった。
おばあちゃんのお通夜だというのに。
焼香をする詩子さんの横顔。
目を閉じて合掌する詩子さん。
ご飯を食べている詩子さんのくちびる。
ひとりでぼうっとしているときの詩子さんを見ても、
どうしてもくちびるに視線が吸い寄せられる。
ぷるんとした瑞々しいくちびる。
現実味がないほど美しいけど、
ちゃんと現実にそこにあると知ってしまった。
手を伸ばせば届くと気づいてしまった。
キスしたい。
キスされたい。
わたしを、知らない世界へ連れて行って欲しい。
詩子さんとなら怖くない。
詩子さんに全部委ねて、大人の階段を登りたい。
詩子さんにもたれかかって、
ほわわんとしていたのに、
妙な気配に現実へ引き戻された。

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