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素敵な笑顔
第20章 詩 告別式
 足が重く、息が苦しくて、耳鳴りが酷かった。
あたしは後悔と罪悪感に押し潰されそうになっていた。
思考力が低下して、
頭のなかでずっとおばあちゃんに謝り続けていた。
視野が狭まり、呼吸の仕方がわからなくなった。
大きな声で叫びたい衝動にかられ、
息を大きく吸い込んだとき、
ふわりと左手が温かく包まれた。
いつの間にか彩音がそばにきて、
手を繋いでくれていた。
まるで恋人同士のように、指を絡ませて。

「おばあちゃん、笑っています。
とっても素敵な笑顔です。
なにも悲しむことないのよって、
言ってくれてるみたい」

 彩音の穏やかな口調で、
すーと呼吸が楽になった。
耳鳴りが消え、視野も元に戻った。

「うん」

 あたしは彩音の手を握り返した。
手のひらがほっとしていると感じた。
無くしていたものを見つけたみたいに。
彩音の言ったことが、嘘なのかほんとうなのか、
確かめようがない。
気休めを言ってくれただけなのかもしれない。
でも彩音のその言葉に、
あたしはどれほど救われたか知れない。
だから信じることにした。
おばあちゃんはなにも後悔していない。
ずっと幸せだったのだ、と。

 手を取り合ったまま、
おばあちゃんの棺が火葬炉に納められるのを見た。
陰気な男から説明を受け、
まあおじさんがスイッチを押す。
穏やかによく晴れた晩秋の日、
あたしたちはおばあちゃんを見送った。
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