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素敵な笑顔
第4章 詩 記憶:温泉旅行
 あたしはおばあちゃんから目が離せなかった。
大人のひとが泣いているのを見たのは初めてで、
そのあまりの悲哀の波動に巻き込まれて、
意味もわからずあたしまで泣いてしまいそうだった。

 そういえばずっとにこにこしていたのに、
宿についてからのおばあちゃんは様子がおかしい。
記帳しているときから、すごく真面目な、
緊張していると言ってもいいような真剣な表情。
さっきのお風呂上がりのおばあちゃんも、
泣き顔を見られないように顔を背けたのではないか。

 おばあちゃん

 静かに呼び掛けたのに、
おばあちゃんは叱られたようににびくっとした。

 詩子……

 どうしたの、泣いてたの?

 あ、ごめんなさい、違うの。
違うのよ。なんでもないわ

 涙を拭う仕草は、無駄のない、
流れるように完璧に美しい所作だった。
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