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素敵な笑顔
第4章 詩 記憶:温泉旅行
 おばあちゃん、お化け見たことある?

 話のついでに聞いただけだった。
ないわよ、と笑いながらの普通の返事を予想していた。
だけどおばあちゃんは、
誰かを思い出したように視線をさ迷わせ、
それから力なく諦めたような微かな笑顔で首を振った。

 見たこと、ないわ

 おばあちゃんは言い、
うつむいて自分の手のひらを見つめていた。
そこに映る誰かに語りかけるように、
おばあちゃんは小さな声でつぶやいた。

 お化けでもいいから、会いたいな……

 おばあちゃんのそのつぶやきの、
なんて切実だったこと。
底が抜けてしまったような深い悲しみが、
まだ小さかったあたしにでもわかった。
まるで無垢な少女のように、
邪念など一グラムもない、
純粋に、ただ会いたい、という感情。
おばあちゃんのそのつぶやきは、
独り言ではなく、
あきらかにだれかに向けて発せられたものだった。
部屋にはあたししかいないのに、
あたしにじゃない、あたし以外の誰か。
ここにはいない、あたしの知らない、
おばあちゃんの大切な誰か。
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