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素敵な笑顔
第26章 音 後日譚 嫉妬
 呆然としていて、
詩子さんがトイレから戻ったことに気づいていなかった。

「なに見てるの?」

 詩子さんがわたしのスマホを覗き込んでくる。
やばって思ったけど隠すと余計怪しいので隠せない。
詩子さんがじぃーと見入っている。
どうしよう。
当選なんかするわけないって思っていたから、
当選したときのことをなにも考えていなかった。

「ふーん、応募してたんだ」

 詩子さんの声のトーンが落ちている。

「行くの?」

 感情の読めない声。

「行くのよね。せっかく当選したんだもんね」

 続けざまに言葉を重ねられ、わたしは返事ができない。

「なんで黙ってるの? 行くんでしょう?」

「あの、えっと……」

 怒ってるよね、確実に。
怒らないほうがおかしいもの。
だってわたしは、自分が束縛魔だって自覚がある。
ついこの前だって、
帰ってくるのがほんの一時間遅かっただけで、
わたしはへそを曲げてしまった。
相手には一途を強要しておいて、
これがもし逆の立場だったら、
わたしは泣いて喚いて抗議すると思う。
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