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素敵な笑顔
第6章 詩 記憶:マイノリティ
 好きなひとと、くちびるとくちびるを合わせるって、
なんて素敵なんだろう。
あたしはまだ知らぬキスの破壊力に、
妄想をたくましくさせていた。

 なんらかの事情があって傷ついたあたし。
心配して傍にきてくれた美咲さんに、
そっと抱き寄せられる。
いつでも汗が光っている印象の美咲さんなのに、
いつも花のエキスを抽出しましたというような、
いい匂いがしていた。
真剣な目をした美咲さんの顔が近づいてくる。
だめ、美咲さん、と言いながらも、
あたしは顔を背けられない。
あたしは美咲さんの目を見つめ、
美咲さんもあたしの目を見つめている。
さらにふたりの距離は縮まり、
美咲さんの吐息が感じられる。
もう近すぎて美咲さんに焦点が合わせられない。
美咲さんのくちびる。
知らないくせに、
勝手にシャインマスカットの風味を想像している。
あるいは白桃、もしくは苺。
とりどりの甘い果物。
そのときのイメージで変わる。
あたしはうっとりと目を閉じる。

 そんな妄想を繰り返しては、
あたしはひとりベッドで枕を抱きしめながら、
漫画のようにじたばたしていた。
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