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素敵な笑顔
第10章 詩 記憶:運命の日
 それともうひとつ。
紗絵は異性の話を全然しなかった。
クラス中、どころか、
学校中のどの男子にも興味がなさそうだった。
あたしと同じように。
だから、もしかして紗絵も、
って期待を捨てきれなかった。
捨てたつもりになっていても、
またいつの間にか手元に戻ってきて、
しっかりと握り締めているのだった。

 保育士になるという夢を持った紗絵と、
特に将来の展望が見えないあたしでは、
当然進学先も違ってくる。
卒業式まであとわずかという時期になり、
先伸ばしにし続けていた決断をしなくてはならなくなっていた。

 プラスになり得ないなら、
ゼロもマイナスも同じこと。
もう美咲さんのときのように、
曖昧にゼロで終わってしまいたくない。
ひとりのときにはそう思うのに、
紗絵を目の前にすると怖じけづいてしまって、
やっぱりなにも言えない。
でもこのままじゃなにも変わらない。
その思いが、ずっと心にあった。
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