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素敵な笑顔
第11章 音 静かな慟哭
 風邪だったら、おばあちゃんにうつっちゃう

 それで彩音が楽になるなら、
おばあちゃんはそのほうが嬉しいのよ

 おばあちゃんの顔が近づいてくる。
優しいおばあちゃん。
心配しないでってふうに微笑みかけられ、
わたしは恥ずかしくなって目を閉じる。
清廉な甘い匂い。
八十に近い年齢なのに全然年寄りじみていなくて、
艶っぽささえ感じる。
ひんやりとしたおばあちゃんのおでこ。

 おでことおでこが触れあったとき、はっとした。
唐突に、さっきの見知らぬ男のひとが、
いつもおばあちゃんのそばにいるひとだと理解した。
ぼやけていたイメージにピントが合う。
二十代半ばの、均整のとれた姿。
整った骨格をしていそうな、正しい姿勢。
おばあちゃんが惹かれたのが大納得の、優しそうな顔。
これは、おばあちゃんの記憶だ。
なんて情熱的な目で見つめられていたのだろう。
なんて愛おしそうに見つめてくるのだろう。
おばあちゃんがどれほど愛されていたか、
恋愛経験皆無のわたしにでも容易にわかる。
愛情の渦に飲み込まれて、
上も下もわからないくらいに溺れて、
もう彼がいてくれないと息ができないってくらい、
必死に、狂おしいほどにしがみついて――
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