この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
素敵な笑顔
第12章 詩 玩具の憂鬱
駅まででいいよ、と何度も言ったのに、
結局お父さんはマンションの入り口の前まで送ってくれた。
これが美香ちゃんなら、
あたしが今日ひとりの部屋に帰るつもりなんかない、
ってバレているかも、と危惧しないといけないけど、
お父さんなら平気。
お父さんは、ちょっと申し訳ないって思うくらい、
あたしのことを知らない。
ずっといい子のままって、信じ込んでいる。
心配性のお父さんのために笑顔で手を振ってから、
一旦マンションのエントランスのなかに入った。
物陰からこっそり、お父さんの車が走り去るのを見届ける。
不思議と罪悪感はわいてこない。
テールランプが見えなくなってからゆっくりと十数え、
あたしは再び外に出た。
マスクをして黒縁のごつい伊達眼鏡を掛け、
うつむき加減で早足に。
そうでもしないと、
しょっちゅう男のひとに声を掛けられるので煩わしい。
ずっと昔に美香ちゃんに買ってもらったイヤホンもつける。
もうとっくに壊れてしまっているけど、
声を掛けられたときに、
聞こえないふりをするのに便利で重宝している。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


