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明君のお母さんと僕
第3章 昆虫図鑑
「いらっしゃい。さあ、入って」
この光景にも少し慣れてきたけど、やっぱり明君のお母さんが玄関のドアを開けて出迎えてくれると、僕は最初恥ずかしくて、顔を下に向けてしまう。
それでも僕の足は開かれたドアに吸い込まれるように、前に進む。
「今日も暑いよね。冷たい麦茶、用意してあるからね」
明君のお母さんは僕が無口で不愛想なところがあっても、いつもと同じ優しい笑顔を崩さない。ただ、違うところもあった。今日の明君のお母さんのお洋服が明るくて可愛らしい。
ボーダーの入った半そでのシャツで、黄色のスカートは膝あたりまでしか隠れていない。普段よりも素足が見えているから、僕はどうしてもドギマギしてしまう。
部屋に上がると、これも慣れてきたが、明君の家の匂いがする。石鹸のような清潔な匂いの中にお線香の香りも混じっていて、なんだろう……外ではあぶら蝉がしゃあしゃあ、うるさく鳴いているのに、この空間だけは厳かで神秘的に思えてしまう。
今日で四日連続になる。僕は四日間、毎日ここに来ていた。
四日前のあの日、明君のお母さんは泣きじゃくる僕を抱きしめながら、「明日も遊びに来てくれる?」と、ふいに聞いてきた。その声は大人の女の人とは思えないほど気弱で寂しそうで、僕は不思議な感覚になった。だけど、救われた。
もしも、「いつでも遊びに来てね」と言われていたら、僕はいつなら遊びに行っていいのか悩んでいたと思うけど、明君のお母さんは「明日も」と言ってくれたのだ。
「うん。来ます」
僕は明君のお母さんの柔らかい体に包まれながら、ちゃんと返事をした。
「ほんと? あ、そうだ。ここで夏休みの宿題でもする?」
とても良い提案だと思った。
「はい! ここで毎日、宿題します」
「毎日? オバサンは構わないんだけど、お家の人に怒られないかしら?」
「えっと、大丈夫です」
「でも、善三郎君のお母さんが心配しちゃうと思うわ。だって……」
明君のお母さんの言わんとしていることは分かった。つい先日亡くなった友達の家に、僕が毎日行っていたら、両親は変な心配をするに決まっている。
「僕の親は共働きなので昼間は家にいないし、僕はよく図書館でひとり勉強もしているので、全然大丈夫です」
これは嘘だった。僕の母親は専業主婦なのでずっと家にいるのだが、こういうことにしておかないと明君のお母さんが納得してくれない。
この光景にも少し慣れてきたけど、やっぱり明君のお母さんが玄関のドアを開けて出迎えてくれると、僕は最初恥ずかしくて、顔を下に向けてしまう。
それでも僕の足は開かれたドアに吸い込まれるように、前に進む。
「今日も暑いよね。冷たい麦茶、用意してあるからね」
明君のお母さんは僕が無口で不愛想なところがあっても、いつもと同じ優しい笑顔を崩さない。ただ、違うところもあった。今日の明君のお母さんのお洋服が明るくて可愛らしい。
ボーダーの入った半そでのシャツで、黄色のスカートは膝あたりまでしか隠れていない。普段よりも素足が見えているから、僕はどうしてもドギマギしてしまう。
部屋に上がると、これも慣れてきたが、明君の家の匂いがする。石鹸のような清潔な匂いの中にお線香の香りも混じっていて、なんだろう……外ではあぶら蝉がしゃあしゃあ、うるさく鳴いているのに、この空間だけは厳かで神秘的に思えてしまう。
今日で四日連続になる。僕は四日間、毎日ここに来ていた。
四日前のあの日、明君のお母さんは泣きじゃくる僕を抱きしめながら、「明日も遊びに来てくれる?」と、ふいに聞いてきた。その声は大人の女の人とは思えないほど気弱で寂しそうで、僕は不思議な感覚になった。だけど、救われた。
もしも、「いつでも遊びに来てね」と言われていたら、僕はいつなら遊びに行っていいのか悩んでいたと思うけど、明君のお母さんは「明日も」と言ってくれたのだ。
「うん。来ます」
僕は明君のお母さんの柔らかい体に包まれながら、ちゃんと返事をした。
「ほんと? あ、そうだ。ここで夏休みの宿題でもする?」
とても良い提案だと思った。
「はい! ここで毎日、宿題します」
「毎日? オバサンは構わないんだけど、お家の人に怒られないかしら?」
「えっと、大丈夫です」
「でも、善三郎君のお母さんが心配しちゃうと思うわ。だって……」
明君のお母さんの言わんとしていることは分かった。つい先日亡くなった友達の家に、僕が毎日行っていたら、両親は変な心配をするに決まっている。
「僕の親は共働きなので昼間は家にいないし、僕はよく図書館でひとり勉強もしているので、全然大丈夫です」
これは嘘だった。僕の母親は専業主婦なのでずっと家にいるのだが、こういうことにしておかないと明君のお母さんが納得してくれない。

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