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明君のお母さんと僕
第5章 柱の観音様
 僕の部屋の壁の柱には、朱色の丸い紙が貼られている。
 丸い紙には瞑想する観音様の絵が書かれている。
 いつから存在していたのか。誰が買ってきたのか。知らない。確認しようと思ったこともない。ただ、僕は物心ついた頃から毎晩寝る前、観音様に三つのお願い事をするようになっていた。なぜ三つなのか。お願いは三つまで叶えてもらえると勝手に信じていたからだ。
 小学校低学年の時は最初に「日本で戦争が起こりませんように」とお願いをしていた。
 戦争に対する恐怖は、田舎に住む叔母の家で読んだ漫画「はだしのゲン」や、図書館で読んだ絵本「ピカドン」、近所の子供会で連れていかれた戦争写真展などの影響が大きい。
一瞬の閃光で街が焼き払われて、人々の皮膚がただれ、「熱い、熱い」と呻きながら川にぞろぞろと向かっていく、まさに地獄絵図。僕はあんなふうに死にたくない。
 二つ目のお願いは可愛いもので、好きな女の子の名前を告げて、「〇〇さんに好きになってもらえますように」。
 三つ目のお願いは、「明日は叱られませんように」だった。
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