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明君のお母さんと僕
第6章 風鈴と羊のタオルケット
ほとんど眠れないまま次の朝、僕は朝食を取ると出かける準備をして、すぐに明君の家に向かった。
今日は絶対いるはず。昨日は明君のお母さん、お昼寝をしていて目が覚めたら夕食を作る時間だったに違いない。うちの母親もよくそんな時間の過ごし方をしている。
だから今日は会える可能性がかなり高い。
それでも僕は明君の家の前に来て、呼び鈴を押そうと手にかけた時、「あ、いない」と予感した。なぜそう感じ取ったのか分からないが、案の定、呼び鈴を押しても返事はなかった。
僕は昨日の反省も踏まえて、今日はしつこく呼び鈴を押さないことにした。
一度自宅に戻って、いつものようにお昼過ぎになってか、再び明君の家を訪れた。
今度こそ、今度こそ。もはや祈りだ。呼び鈴を押すとき「どうか出てきてください」と懸命に祈ってから、ゆっくりとピンポーンと鳴らした。
「はーい」
明君のお母さんの声だ! 僕は嬉しさのあまり、犬のようにハァハァと息が荒くなった。
あと数秒で会える。スリッパの音が聞こえてくるはず。
聞こえてこない。
聞こえるのは蝉の泣き声だけだ。
明君のお母さんの声がしたと思ったのは、僕の空耳だった。
僕は膝が折れそうになったけどなんとか踏ん張って、ゆっくりと踵を返した。
明君の家から一歩ずつ遠ざかるたび、堪えていた涙が我慢できなくなって、階段を下りている時にはボロボロと泣いていた。
ひどいよ、ひどいよ。
家に帰ってから、お土産にもらっていた夏蜜柑を二個とも食べた。やけ食いだった。
★
これが最後と心に決めて、僕はその翌日、お昼過ぎに明君の家に向かった。
呼び鈴を押すときは祈ることなどしなかった。玄関前に来るや、すかさず呼び鈴を押す。
返事がない。帰るぞ。
僕は未練を断ち切るように踵を返す。
全て終わった。終わったのだ。今日から僕はまた家でも学校でも疎外感を覚えながら、独りぼっちで息苦しく生きるのだ。
背後でドアノブの回る音がした。
どうせまた空耳だ。振り向かずにすたすたと歩く。
「善三郎君……」
僕はすぐに振り向けなかった。どうして僕を無視していたんだよ。
明君のお母さんだけは違うと思っていたのに。
「善三郎君!」
背中にしがみつくように、僕の大好きな人の声が飛んできた。
明君のお母さんのこんなに大きな声を聞いたのは初めてだった。
今日は絶対いるはず。昨日は明君のお母さん、お昼寝をしていて目が覚めたら夕食を作る時間だったに違いない。うちの母親もよくそんな時間の過ごし方をしている。
だから今日は会える可能性がかなり高い。
それでも僕は明君の家の前に来て、呼び鈴を押そうと手にかけた時、「あ、いない」と予感した。なぜそう感じ取ったのか分からないが、案の定、呼び鈴を押しても返事はなかった。
僕は昨日の反省も踏まえて、今日はしつこく呼び鈴を押さないことにした。
一度自宅に戻って、いつものようにお昼過ぎになってか、再び明君の家を訪れた。
今度こそ、今度こそ。もはや祈りだ。呼び鈴を押すとき「どうか出てきてください」と懸命に祈ってから、ゆっくりとピンポーンと鳴らした。
「はーい」
明君のお母さんの声だ! 僕は嬉しさのあまり、犬のようにハァハァと息が荒くなった。
あと数秒で会える。スリッパの音が聞こえてくるはず。
聞こえてこない。
聞こえるのは蝉の泣き声だけだ。
明君のお母さんの声がしたと思ったのは、僕の空耳だった。
僕は膝が折れそうになったけどなんとか踏ん張って、ゆっくりと踵を返した。
明君の家から一歩ずつ遠ざかるたび、堪えていた涙が我慢できなくなって、階段を下りている時にはボロボロと泣いていた。
ひどいよ、ひどいよ。
家に帰ってから、お土産にもらっていた夏蜜柑を二個とも食べた。やけ食いだった。
★
これが最後と心に決めて、僕はその翌日、お昼過ぎに明君の家に向かった。
呼び鈴を押すときは祈ることなどしなかった。玄関前に来るや、すかさず呼び鈴を押す。
返事がない。帰るぞ。
僕は未練を断ち切るように踵を返す。
全て終わった。終わったのだ。今日から僕はまた家でも学校でも疎外感を覚えながら、独りぼっちで息苦しく生きるのだ。
背後でドアノブの回る音がした。
どうせまた空耳だ。振り向かずにすたすたと歩く。
「善三郎君……」
僕はすぐに振り向けなかった。どうして僕を無視していたんだよ。
明君のお母さんだけは違うと思っていたのに。
「善三郎君!」
背中にしがみつくように、僕の大好きな人の声が飛んできた。
明君のお母さんのこんなに大きな声を聞いたのは初めてだった。

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