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明君のお母さんと僕
第6章 風鈴と羊のタオルケット
やり場のない怒りに体は火照り、喉がカラカラだった。
明君のお母さんは僕の飲みほした麦茶のコップの氷を見ていた。
「ずっと前からなの?」
僕は聞く。
「ううん。最近なの。仕方ないの。ほら、明が……」
「明君がいなくなったのが理由?」
僕は「死んだ」という言葉は使いたくなかった。
「うん」
「なんで!?」
明君のお母さんは被害者なのに、僕は責めるように言ってしまった。
「あの人も辛いのよ。それに、明が事故に遭ったのは……」
僕はようやく慌てた。だめだ。この次の言葉を言わせてはいけない。
「私のせいだから……」
僕の願いも虚しく、明君のお母さんは絞り出すような声で呟いた。
僕はコップを持つ手がぶるぶると震えてしまう。
違う──違うんだ。
だけど僕は何も言えなかった。
明君がいなくなってから、ずっと思っていたことだ。
あの日、僕が明君と遊ぼうなんて約束していなければ……。
明君のお母さんが突然、「ワッ」と泣き出した。
右目の痣どころか、顔全体を両手で覆って、細い体を震わせていた。
大人の人がこんなに子供みたいに泣きじゃくるなんて。
僕の知らない時間帯、旦那さんに心を抉られるような言葉を沢山浴びせられて、暴力も振るわれていたんだ。
僕はいまさら「僕のせいです」なんて自己愛に満ちた懺悔の告白をするつもりはない。
ただただ明君のお母さんが可哀想で仕方なかった。
僕に出来ることは一つしかなかった。
「ううっ、うわああぁあ」
それは単に同情でしかなかったが、僕は明君のお母さんが可哀想で一緒に泣き出していた。
突然、僕まで泣き出したから明君のお母さんは「大丈夫よ。善三郎君まで泣くことないのに」と自分も泣きながら、体を摺り寄せて、背中をさすってくれた。
明君のいなくなった明君の部屋で。
★
涙は不思議だ。悲しいから泣くのに、泣けば悲しみも涙と一緒に流れていく。
僕はいまリビングの床で、死んだ人が棺に入るときのようにお臍のあたりで両手を組んで、仰向けに寝そべっている。
隣には明君のお母さんが同じように寝そべっていた。
「なんだか泣き疲れたね。お昼寝でもする?」
沢山泣いた後、明君のお母さんは泣きはらした目で、照れたように微笑みかけてきた。
明君のお母さんは僕の飲みほした麦茶のコップの氷を見ていた。
「ずっと前からなの?」
僕は聞く。
「ううん。最近なの。仕方ないの。ほら、明が……」
「明君がいなくなったのが理由?」
僕は「死んだ」という言葉は使いたくなかった。
「うん」
「なんで!?」
明君のお母さんは被害者なのに、僕は責めるように言ってしまった。
「あの人も辛いのよ。それに、明が事故に遭ったのは……」
僕はようやく慌てた。だめだ。この次の言葉を言わせてはいけない。
「私のせいだから……」
僕の願いも虚しく、明君のお母さんは絞り出すような声で呟いた。
僕はコップを持つ手がぶるぶると震えてしまう。
違う──違うんだ。
だけど僕は何も言えなかった。
明君がいなくなってから、ずっと思っていたことだ。
あの日、僕が明君と遊ぼうなんて約束していなければ……。
明君のお母さんが突然、「ワッ」と泣き出した。
右目の痣どころか、顔全体を両手で覆って、細い体を震わせていた。
大人の人がこんなに子供みたいに泣きじゃくるなんて。
僕の知らない時間帯、旦那さんに心を抉られるような言葉を沢山浴びせられて、暴力も振るわれていたんだ。
僕はいまさら「僕のせいです」なんて自己愛に満ちた懺悔の告白をするつもりはない。
ただただ明君のお母さんが可哀想で仕方なかった。
僕に出来ることは一つしかなかった。
「ううっ、うわああぁあ」
それは単に同情でしかなかったが、僕は明君のお母さんが可哀想で一緒に泣き出していた。
突然、僕まで泣き出したから明君のお母さんは「大丈夫よ。善三郎君まで泣くことないのに」と自分も泣きながら、体を摺り寄せて、背中をさすってくれた。
明君のいなくなった明君の部屋で。
★
涙は不思議だ。悲しいから泣くのに、泣けば悲しみも涙と一緒に流れていく。
僕はいまリビングの床で、死んだ人が棺に入るときのようにお臍のあたりで両手を組んで、仰向けに寝そべっている。
隣には明君のお母さんが同じように寝そべっていた。
「なんだか泣き疲れたね。お昼寝でもする?」
沢山泣いた後、明君のお母さんは泣きはらした目で、照れたように微笑みかけてきた。

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