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明君のお母さんと僕
第7章 行水
だけどもしかしたら、あれは昨日だけのことで、明君のお母さんはもうそんなつもりがないかもしれない。一種の気の迷い、みたいなものは誰だってあるものだから。
リビングでひとり棒立ちになっていると、明君のお母さんが戻ってきて、
「ねえ、汗すごくかいたでしょ。シャワー浴びる?」
「え?」
突然の提案に僕は体が硬直した。
「シャワーより、お風呂溜めたほうがいいかな。行水みたいに。気持ちいいわよ」
明君のお母さんは次々と思いついたことを提案してくるので、僕はなかなか返事をするタイミングが見つからない。
「そうね、それがいい。明も好きだったのよ。冷ためのお湯に入るのが……」
言いながら明君のお母さんはバスルームに向かってしまった。
そして本当にお湯を溜める音が聞こえてきた。
僕は冷静になれ、と自分に言い聞かせる。汗を流すために明君のお母さんは、お風呂に入りなさいと言っているだけなのだ。人の家のお風呂を借りた経験はないけど大丈夫。問題ない。
「すぐに溜まるからね。ほら、立っていなくていいから。椅子に座っていて」
バスルームから戻ってきた明君のお母さんは、僕のお尻を軽くペシと叩いてきた。
気恥ずかしさはあったが、それ以上に幸せな気持ちになった。
やっぱり昨日のことがあったおかげだろうか。
明君のお母さんは僕に対して以前よりも心を開いて、打ち解けてくれているように感じる。
そうやって気軽に仲良くしてくれる人がいることが、僕には何よりも嬉しかった。
お風呂が溜まるまでの間、明君のお母さんは台所で何か用事をしていて、僕はその間、夏の甲子園中継をぼんやりと見ていた。時々、明君のお母さんは「どっちが勝ってるの?」とか「暑いのに大変ね~」とか高校野球について話しかけてきた。気を使ってくれているようだけど、のんきに鼻歌も歌っていたから、僕はいつの間にか自分の家にいる感覚になっていた。
「西瓜、食べる?」
もうそろそろお風呂が溜まりそうな時、明君のお母さんが聞いてきた。
「はい。食べたいです」
「じゃあ、待って」
明君のお母さんは冷蔵庫から西瓜を取り出すと、包丁で切り始めた。
「これ、見て」
「なんですか?」
「この包丁、この前貰ったんだけど、切れ味がすごいの」
「へえ。そうなんですね」
「これでズブッと刺したら、死んじゃうかも」
リビングでひとり棒立ちになっていると、明君のお母さんが戻ってきて、
「ねえ、汗すごくかいたでしょ。シャワー浴びる?」
「え?」
突然の提案に僕は体が硬直した。
「シャワーより、お風呂溜めたほうがいいかな。行水みたいに。気持ちいいわよ」
明君のお母さんは次々と思いついたことを提案してくるので、僕はなかなか返事をするタイミングが見つからない。
「そうね、それがいい。明も好きだったのよ。冷ためのお湯に入るのが……」
言いながら明君のお母さんはバスルームに向かってしまった。
そして本当にお湯を溜める音が聞こえてきた。
僕は冷静になれ、と自分に言い聞かせる。汗を流すために明君のお母さんは、お風呂に入りなさいと言っているだけなのだ。人の家のお風呂を借りた経験はないけど大丈夫。問題ない。
「すぐに溜まるからね。ほら、立っていなくていいから。椅子に座っていて」
バスルームから戻ってきた明君のお母さんは、僕のお尻を軽くペシと叩いてきた。
気恥ずかしさはあったが、それ以上に幸せな気持ちになった。
やっぱり昨日のことがあったおかげだろうか。
明君のお母さんは僕に対して以前よりも心を開いて、打ち解けてくれているように感じる。
そうやって気軽に仲良くしてくれる人がいることが、僕には何よりも嬉しかった。
お風呂が溜まるまでの間、明君のお母さんは台所で何か用事をしていて、僕はその間、夏の甲子園中継をぼんやりと見ていた。時々、明君のお母さんは「どっちが勝ってるの?」とか「暑いのに大変ね~」とか高校野球について話しかけてきた。気を使ってくれているようだけど、のんきに鼻歌も歌っていたから、僕はいつの間にか自分の家にいる感覚になっていた。
「西瓜、食べる?」
もうそろそろお風呂が溜まりそうな時、明君のお母さんが聞いてきた。
「はい。食べたいです」
「じゃあ、待って」
明君のお母さんは冷蔵庫から西瓜を取り出すと、包丁で切り始めた。
「これ、見て」
「なんですか?」
「この包丁、この前貰ったんだけど、切れ味がすごいの」
「へえ。そうなんですね」
「これでズブッと刺したら、死んじゃうかも」

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