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明君のお母さんと僕
第8章 包丁
 やがてクローゼットの壁の奥から音がした。扉の開く音だ。
 どうやらクローゼットと隣接している部屋に、二人は入ってきたようだ。
 僕は明君の家のリビングの構造を思い浮かべる。
 リビングの入口を真っすぐに進むと、ベランダがあった。
 リビングは二つの部屋と繋がっていて、ベランダ側の和室には明君の仏壇が置いてある。
 そうなると、もう一つの部屋と明君の部屋は隣接していることになる。
 僕はその部屋に入ったことがないけど、大方の予想はついていた。
 夫婦の寝室だ。
「早くしろ」
 またあの男の声がした。
「はい」
 明君のお母さんもいる。
 僕は座ったままクローゼットの奥の壁に耳をあてて、出来るだけ会話を聞き取ろうとした。
 ぱさっと布が落ちる音。
 あぁ、やっぱり……と僕は思った。
 今から明君のお母さんは旦那さんとSEXをするんだ。
「ほら、しゃぶれ」
「はい」
 明君のお母さんは最初にフェラチオをさせられていた。
「んん、んふう」
 僕も聞きおぼえのある鼻から洩れる甘い吐息も聞こえてくる。
「おおお」
 気持ちよさそうに呻く男の声が、僕には気持ちが悪い。
 それでも明君のお母さんはだんだん口の動きを速めているようで、ジュジュッと肉棒を絞り上げる時の音も聞こえてきた。
 明君のお母さんは僕にフェラチオをしてくれた時も、唇をぴたっとおちんちんに密着させて、下から上に向かって果汁を絞るように締め付けてくれた。
「んぐぐぐう!」
 突然、明君のお母さんが毒でも食らったように呻いた。
「げほっ、げほっ」
 そして咳き込む。
「もっと奥まで咥えるんだよ」
 まだ明君のお母さんはゲホゲホしているのに、男はそう言った。
「んげええええ」
 明君のお母さんは断末魔の叫びのような声を漏らしている。
 声だけしか聞こえないから、妄想するしかない。
 明君のお母さんはいま頭をがっしりと抑えられて、喉の奥まで咥えさせられているんだ。
「苦しい?」
 男が妙に優しい声で尋ねる。明君のお母さんは「んぐぅ」と呻いている。
「苦しいのはお前だけ?」
 訳が分からない。だけどすぐさま明君のお母さんが「げぇ」と嘔吐するような声を漏らしたから、僕は可哀想で涙が出そうになる。
 早く終わってくれ、早く。
 僕はしゃがみこんだまま、天に祈るように上を見上げた。
 蛍がいた。
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