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「私が欲しいですか?お嬢様」
第13章 マスター〜純也〜
「お待たせ、ごめんね。
1人にしちゃって」
しばらくしたらマスターが戻ってきた。
「あ、いえ。大丈夫です」
そう答えると、マスターは
結斗さんが座っていたそこへ
ドカっと座った。
2人は、もういないのだろうか…
この個室からじゃ会話は聞こえないし
いるかどうかを確認する勇気もない。
どうしたらいいかわからずに
コーヒーに手を伸ばしかけた。
「あの2人は帰ったよ。
それにこの店は鍵をかけたからね。
今日はもう誰も来ないよ」
鍵をかけた…?
「マスター…」
優しく微笑むマスターに
思わず安心した。
「たぶん颯太が放課後に
迎えにくる。でもそれまでは
ゆっくりしてな」
マスターは店を閉めたからか
煙草に火をつけた。
「あ、ごめんね。煙草、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です」
ふぅーと煙りを吐く姿も
また渋い。
かなり歳は離れてるけどかっこいい。
「マスター」
「ん?」
煙草をくわえたまま
右眉だけを上げて答えた。
「マスターは独身?」
あたしの質問に目を開く。
そして一度だけ瞬きをすると
くわえていた煙草を取った。
「独身だよ。まぁ好きな女は
いるけどな」
「好きな人…」
「ああ。俺はそいつ以外好きに
なれないの。だからずっと独身」
「告白とかすればいいのに…
マスターかっこいいし!
上手くいくと思うんだけどな…」
ぷっ!
クスクス…
突然笑うマスター。
「いやぁ、この歳でもかっこいいって
言われるのは嬉しいね。
でもいいんだよ、そいつはもう結婚して
子供もいる。幸せならそれでいいんだ」
そう言ったマスターの顔は
すごく穏やかで、本当に
その人を愛してるんだと感じた。