この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
「私が欲しいですか?お嬢様」
第20章 純也〜マスターの恋〜
いつもその個室を使う。
ウェーブのかかった長い髪
大きな瞳
白い肌で透きとおっていて
まるですぐに消えてしまいそうな
くらいの美しさ。
「お待たせいたしました」
いつも同じ紅茶を頼む。
アールグレイ。
「ありがとうございます」
柔らかく笑う。
彼女は雨の中、傘もささずに
温室まできて
このカフェに迷い込んできた。
びしょ濡れで入ってきて
泣いていた。
俺は慌ててタオルを出して
頭をガシガシ拭いた。
訳を聞いたら
彼女はとても可愛がっていた
インコを亡くしたそうだった。
とても学園に来る気には
なれなかったけど
厳しい母の言いつけで
仕方なく登校した、だが
やはり勉強する気にもなれなくて
抜け出したということだった。
「可愛がってたんですね」
俺にはそんな事しか言えなかった。
インコにそこまで
思い入れしてる彼女の純粋さに
少し驚いた。
それからというもの
彼女は毎日の様にここへ来る。
だが、まだ名前も他の会話も
できていない。