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「私が欲しいですか?お嬢様」
第20章 純也〜マスターの恋〜
沙月の声に耳を傾け
聞こえてきた言葉は
とんでもない内容だった。
ー両親の…決めた、ひっく…
婚約者に…無理矢理…うぅ
されそうになって…
叫んだから…雪弥が…
助けてくれたんだけど
あたし……ぅぅ…ー
そういえば、いつもは
制服なのに今日は私服だ。
って事は学園を休んだのか。
俺はかける言葉も見つからず
震える沙月の頭をずっと撫でた。
「怖かったな…」
ぎゅうっと服を掴む力が
強くなった。
俺はたまらなくなって
思いきり抱きしめた。
「無理すんな…泣きたいだけ
泣いていいんだよ」
沙月は糸が切れた様に
泣きじゃくった。
カフェの入り口では
執事の雪弥が背中を向け
誰かが入って来ないようにしてる。
俺はただ泣く彼女を
抱きしめるしかできなかった。
守ってやりたいのに…
俺には何もない…
痛いほど感じる身分の違いに
心が締め付けられて
沙月を抱きしめる力もさらにこもった。