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「私が欲しいですか?お嬢様」
第23章 彩芽〜繋がる過去〜
もちろん、
ずっと覚えていたわけではない。
沙月の中でも遠い遠い記憶として
頭の奥にしまわれていた。
なぜなら、その頃の事は
彩芽の記憶には一切ないから。
記憶を無くしたのを機に
引っ越しをしたし
颯太とも会っていなかった。
「いいえ、もちろん
最初はあれ…?どこかで…って
感じだったわ」
そういえば…
私はここで初めて会った時
どこかで…って言われたな…
颯太はそんな事を思い出しながら
立ち上がり、いつも着ている
上着の内ポケットから1枚の
写真を取り出した。
「もう…会えないと思っていたのです」
そう言って、その写真を
沙月に見せる。
「やっぱり…あの時の子だったのね」
写真を見て、沙月は確信した。
「黙っていて申し訳ありません。
再会しても…彩芽様は…
覚えていらっしゃなかったので
言う必要はないかと…」
椅子に再び座り、まっすぐに
沙月を見る。
そんな颯太に沙月は謝った。
「いいえ、ごめんなさい」
突然の謝罪に驚く颯太。
「え…?そんな謝る必要は…」
小さく首を横に振ると
沙月は颯太にある事実を伝えた。
「彩芽は、6歳の時に
1度交通事故にあって、
6歳より前の記憶は一切ないのよ…」