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「私が欲しいですか?お嬢様」
第23章 彩芽〜繋がる過去〜

「え…?それは…どういう…」
颯太は知らなかった事実に
驚いた。
ただ、小さい頃の記憶だから
曖昧だったり覚えていないだけかと
思っていた。
けれど…
「彩芽様は…私を含め
その前の記憶は全てない…と…」
目を伏せて、また視線を合わせる。
「一切と言うのは、言い過ぎた
かもしれないわね…戻った記憶も
あるわ。一時は私やパパの記憶も
無くしていたの。
…それは時間が経つにつれ
少しずつ思い出してきたわ。
けれど、あなたの事を写真を
見せても思い出せなかったの」
颯太の全身から力が抜ける。
自分の事だけ忘れてしまっている。
記憶障害…仕方ない事だが
ショックは大きかった。
目を伏せ、颯太はふっと笑った。
「だから…なんですね」
「ん?」
「昔、彩芽様にしていたことを
今やっても何も反応もなかったので
……」
たった半年間だけの期間。
けれど、その半年は
ほとんど彩芽と一緒だった。
ーおいで
ってすると嬉しそうな顔で
ぎゅぅとしてくる。
幼い頃のその行動をしても
彩芽は思い出した様な仕草も
反応もなかった。
「そう…だったのね。
あんなに仲がよかったのに…」
颯太は目を伏せたまま
少し考えた。
もうそれから10年以上…
まだ戻る可能性はあるのか…
「沙月様…」
「ん?」
彩芽は夢に出てくる男の子の
話を何度かしていた。
可能性は…あるかもしれない。
「彩芽様の記憶が戻る可能性は…
もうないと思われますか?」

