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「私が欲しいですか?お嬢様」
第26章 マスターの恋模様
「花の都」
そう呼ばれるフィレンツェ。
ルネサンスの雰囲気が今も残る
華やかで美しい町。
「ちょっと歩くけど、
ミケランジェロ広場まで行こうか?」
「あの町が見渡せるってところ??」
沙月の目が輝く。
「ああ、そうだよ」
「ぜひ!私、仕事以外で
外に出ないから行ったことないの!」
そう言って早く早く!と
手を引っ張る。
仕事以外で出ないなんて
なんて損してるんだ。
日本では見ることはない
また違う美しさがあるのに…
そんな事を思いながらも
着いていく。
「そんなに走るな。
転ぶよ?」
沙月は急に立ち止まり
純也を振り返った。
「ごめんなさい…私ったら。
年甲斐もなく…」
俺はそうやって謝る
沙月をかわいく感じる。
38歳にはどうやっても
見える顔付きではない。
彩芽ちゃんと2人で
歩いていたら母娘ではなく
姉妹にしか見えない。
「いや、いいんだ。
けど…」
話しながら沙月に歩み寄る。
「その勢いだと、いつか転ぶぞ?
ん?」
純也はそれだけ言うと
クスっと笑い、沙月の手を引き
歩き始めた。
純也のその発言が
沙月には少し気に入らなかった。
「もうっ!ひどい!
私はもう38ですよ!?
転んだりしません!」
「あははっ!」
憎まれ口を叩いていても
沙月はしっかりと
純也の手を握り返していた。