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「私が欲しいですか?お嬢様」
第26章 マスターの恋模様


広場まであと少し。


「はぁっ…もうっ…だめ」


ミケランジェロ広場は丘の上にある。

だから、行くのには
上り坂を30分くらい登らなきゃ
ならない。


登り始めて20分、
沙月は日頃の運動不足で
バテ始めていた。


「おいお〜い。
あと少しだから、な?」


優しく声をかけ
手を引く純也。



純也さんはまだ余裕そう…
私よりも10個も上なのに、どうして!

「あ、お前今
俺の方が上なのにどうしてとか
思っただろ?」


ぎくっ


バレてる…

顔に出ていたのかと思い
マズイなぁ…って顔をする沙月。


「図星じゃねぇか。こら。
まったく!
ほら!俺より若いんだから頑張る!」


そう言うと勢いよく
手を引かれた。


「うわぁっ!」




少し前を歩く純也の背中を見つめる。



私の初恋。

初恋は色褪せないって言うけど
本当なんだな。

あれからもう何十年も経って
私は彩芽を産んで
雪弥を失ってしまって

こんなおばさんになって


それでもそのあなたの
頼れる所も

こうやって手を引いてくれる所も


昔と変わらない。




ねぇ、雪弥


あなたが私と純也さんを
引き合わせたのよね。


学園に入って間もない私に
カフェの場所を教え

『お一人の時間が必要な時
ぜひ行ってみてください』


私は純也さんに出会った。




そしてまた…


私はあなたの手紙によって
純也さんの所へ行った。


雪弥…ありがとう。



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