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本当の貌
第2章 味くらべ
駅係員の休憩は、基本的に一人ずつ
取ることになっている。
だが、定発の係員は別でサイクルを
組んでいる為、休憩室で会う事が
よくある。
水沢さんは、弁当箱を備え付けの
電子レンジに入れて、タイマーを
セットした。
「昨日はありがとうございました。
焼肉、美味しかったですね」
「そうですね。あの店はまた行きたく
なりますね」
確かに美味しい焼肉だった。
しかし、俺は焼肉の味よりも、
そのあと中本さんとラブホで
過ごした濃密な時間の方が、
遥かに印象的だった。
「そういえば、新人研修って、
いつまでなんですか?」
「それが……、今日までなんです」
水沢さんは、不安げな表情でそう
言った。研修中は中本さんが常に
隣にいる為、 安心だったが、
明日からは一人になるのだ。
「心配しないで、何かわからない事が
あれば、俺が事務所に居るんで、
聞いてくださいよ」
定発の仕事は全て覚えている。
自信を持って水沢さんをサポートで
きると伝えると、彼女の顔が、
ぱっと明るくなった。
「凄いですね! 本当に頼りにさせて
もらいますね」
「あはは、任せて下さい」
その時、「チンッ!」と、電子レンジ
が鳴った。温まった弁当箱を
取り出そうと、水沢さんが振り返る。
彼女の首筋に、赤い痣の様なものが
見える。虫刺されかと思うような、
非常に小さいものだ。
「水沢さん、首の……」
問いかけようとした時、休憩室の
ドアが勢いよく開いた。
先輩の桑原さんだった。
「山崎! ホームでお客様が倒れてる。
手を貸してくれ!」
「わかりましたっ!」
俺は桑原さんに続いて、休憩室を
飛び出した。
俺の気のせいかもしれないが、
あれは…
キスマークにも見えた…
しかし、その日は結局、疑問を問う
ことはできず、水沢さんは勤務を終え、
退勤してしまった。
その日の夜休憩。
俺が一人、食事を終えてコーヒーを
飲んでいた時、とっくに退勤した
はずの中本さんが、休憩室に姿を
現した……
取ることになっている。
だが、定発の係員は別でサイクルを
組んでいる為、休憩室で会う事が
よくある。
水沢さんは、弁当箱を備え付けの
電子レンジに入れて、タイマーを
セットした。
「昨日はありがとうございました。
焼肉、美味しかったですね」
「そうですね。あの店はまた行きたく
なりますね」
確かに美味しい焼肉だった。
しかし、俺は焼肉の味よりも、
そのあと中本さんとラブホで
過ごした濃密な時間の方が、
遥かに印象的だった。
「そういえば、新人研修って、
いつまでなんですか?」
「それが……、今日までなんです」
水沢さんは、不安げな表情でそう
言った。研修中は中本さんが常に
隣にいる為、 安心だったが、
明日からは一人になるのだ。
「心配しないで、何かわからない事が
あれば、俺が事務所に居るんで、
聞いてくださいよ」
定発の仕事は全て覚えている。
自信を持って水沢さんをサポートで
きると伝えると、彼女の顔が、
ぱっと明るくなった。
「凄いですね! 本当に頼りにさせて
もらいますね」
「あはは、任せて下さい」
その時、「チンッ!」と、電子レンジ
が鳴った。温まった弁当箱を
取り出そうと、水沢さんが振り返る。
彼女の首筋に、赤い痣の様なものが
見える。虫刺されかと思うような、
非常に小さいものだ。
「水沢さん、首の……」
問いかけようとした時、休憩室の
ドアが勢いよく開いた。
先輩の桑原さんだった。
「山崎! ホームでお客様が倒れてる。
手を貸してくれ!」
「わかりましたっ!」
俺は桑原さんに続いて、休憩室を
飛び出した。
俺の気のせいかもしれないが、
あれは…
キスマークにも見えた…
しかし、その日は結局、疑問を問う
ことはできず、水沢さんは勤務を終え、
退勤してしまった。
その日の夜休憩。
俺が一人、食事を終えてコーヒーを
飲んでいた時、とっくに退勤した
はずの中本さんが、休憩室に姿を
現した……