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第4章 蛇蝎の槽

その精悍で凛々しい口には鎖を咥えている。　そのリードに引かれて今日の主役が出てくる。
鎖は優雅なバタフライマスクをつけた女の首輪につながっていた。

リードを引いているのはマリーの愛犬「ヨシュァ」、その大きさスタイルとも見たこともないほど立派なシベリアンハスキーだ。
ここは、犬が女の首輪を牽く世界――。

真っ白な毛皮のコートからスラリと素足が伸び、赤いハイヒールがステージの中央まで進む。
マリーが首輪からリードを外し、コートを脱がせると、フロアから響めきがおこる。

「おお、素晴らしい。　肌の白さといい、脚の美しさといい日本人離れしているな……」

「ええ、これはまたいい女だ。　話に聞くと顔のほうも相当な美人だそうですよ」

登場した今日の陵辱される獲物の良さに、フロアは騒めいていた。
女の衣装はマリーとは対照的に赤いコルセットをしている。
しかし豊かなバストも股間も隠すことのないデザインで、代わりに赤いロープが菱形を作り身体を拘束している。　その亀甲模様は女体を被虐的に美しく見せる衣装といってよかった。