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恋セヨ乙女
第15章 動き出した関係
隣の部屋から音楽が流れてきて、現実に戻った俺は立ち上がり鞠華の部屋を出る。


アパートの外階段を降りながらこんな状態で付き合ってる意味があるのだろうかと考えた。
彼女の肌を記憶に留める一方で鞠華への気持ちは日増しに薄くなっていく。
…それは鞠華も同じじゃないかと思っている。


打ち上げと称した朝帰りが増えた。
煙草の臭いをプンプンさせて俺の部屋に帰ってくる鞠華。
あれだけセックスが好きな女だ。俺が相手にならないなら他所でシててもおかしくないだろう。


それでも別れないのはお互い情だけはあるからだろうか。


「……!」


「うわっ!!」


足早にアパートから通りに出た瞬間、通行人とぶつかりそうになった。


「すみません」


「あ、いえ…、……あ。」


俺を知っているかのような反応に目を凝らして顔をよく見ると、それは鈴村さんの……


「………」


正直今はあまり関わりたい相手じゃない。
気づかないふりで先に歩きだした。


すると…


「あの、真優の学校の先生ですよね。前会った…」


ヤツは俺を呼び止める。
仕方なく足を止め振り返って応えた。


「…ああ、君か」


「俺、あなたに聞きたいことがずっとあって」


「何かな」


「あの…失礼だったらすみません。唐突ですけど…以前、真優に何かしましたか?」


少年は真っ直ぐな目で俺を見ていた。


「何かって…何?」


「何かっていうのは…なんつーか…つまりその…」



「…鈴村さんに手を出したとか言いたいの?」


コクンとヤツは頷いた。



「何でそんなこと?第一俺は教師だよ」


「教師も男っす」


「……悪いけど生徒に手を出すほど飢えてない。おまえと一緒にするな」


「なっ…!」


「…もういいか?」



再び踵を翻すともう一度呼び止められる。


「…それは信じていいんですね」


「それを聞くのは俺じゃないだろ?」


「………」


少年は黙り込む。
さっきまでキスしてたっていうのに一体どうなってるんだ鈴村さん…


でも…


いいことを思い付いたと俺の口角が上がる。


「…本当に知りたいか?」


一瞬俯いたヤツが顔を上げた。



「後悔しない?」



今日の月は新月だ。
光の当たる場所もなく、真実は闇に隠れて無いに等しい。






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