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恋セヨ乙女
第3章 接近
頬が熱くなって思わず教科書で隠すと教科書越しに先生と目が合った。


あ、ヤバい。
咄嗟に思った予感は的中。



「じゃあ鈴村さん、12ページ読んでみて」



「あ、は、はい!」



バラバラと慌ててそのページを探すけれど焦れば焦るほど見つからない。



「困るな、授業中ボーッとしちゃ」


「…すみません」


「何考えてたの、悩み事?」


「!!!」



タイミング悪すぎ。
『先生の背中が色っぽいと見てました』なんて言えるわけないし!



変な汗が滲み出るほど動揺する私をよそに、クラスメイトは「先生に心配されていいな」なんて暢気なものだ。


「あ、あの…進路の事とか…」


「大事なことだけど今考える事じゃないかな」


「すみません」


「でも、そんなに悩んでるならいつでも相談に乗るよ」



その瞬間、教室が悲鳴に包まれる。



「きょーやくん!アタシも進路悩んでるぅー!恭也くんのお嫁さんになりたいデス!」


「ハハ、何を言ってるんだか。でもみんな、本気で悩みがあるなら昼休み、職員室においで。俺でよければ相談に乗るし頼りになる先生方もたくさんいるから」


「えーっ!恭也くんだけに聞いてほしい!」



「俺は新任だし、河内先生の意向です」



「えーーっ!サナちゃん手ぇ回しすぎ!」



教室が笑いに包まれて私は少し冷静さを取り戻す。



「それはそうと…鈴村さん、12ページ見つかったかな?」



「は、はい」



ドキドキしながら指定されたページをどうにか読み上げ席に座る。
ただ教科書を読むだけの時間がひどく長く感じられて。



隣のゆらがまた寄ってきて小声で囁いた。



「もう、真優先生の背中見すぎ」



「!!!も、元はといえばゆらが変なコト言い出すから!」



「シっ!また先生に注意されるよん」



「~~~!!」


ゆらは楽しそうにノートで口元を隠して離れていく。


…絶対面白がられてるよね。
そんなゆらを恨めしく思い頬を膨らませる。



でも、吉野先生…いい先生なんだな。


『そんなに悩んでるならいつでも相談に乗るよ』



さっきの言葉を思い出すと心がほわっと暖かくなった。











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