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恋セヨ乙女
第17章 セックスレス
「…そういえば鞠華さんは何のお仕事をしてるんですか?」


「私?私はダンサー…それとダンス講師もしてるの」


「ダンサー!」


凄いと真優ちゃんが私を見る。


「別に凄くないのよ、いつも焦ってばかりだわ」


「…でもみんながなれる仕事じゃないですよね?やっぱり凄い」


「………」


凄い?
…そんなにいいモノじゃない。


何の仕事でもそうだけど、なれたから終わりじゃない。

そこからが始まりでその座にいたければ、もっと先を目指したければ今まで以上の努力をしていかなければならない。


理想と現実の差に悩むこともある。


孤独な努力と葛藤の無限ループ。



確固たる信念のもと、犠牲にするものだってある。切り捨てなければいけないものだって……



「真優ちゃんは?真優ちゃんはなりたいものはある?」


「私…ですか?」


「そう」


彼女は少し考えて「分かりません」と言った。


「…あなたくらいの年の子なら将来が見えないなんて珍しいことじゃないわ」


「そう…ですか?」


「そうよ。やりたいことなんてこれから見えるものだもの」


高校時代、親の期待に応えようとしていた自分を思い出す。
親の道が自分の道だと、敷かれたレールを歩くことが最善だと信じて疑わなかったあの頃の私。


「分からないって迷えるだけあなたの選択肢が多いってことよ。…いろいろ見て触れて、見つかるといいわね」


「…はい」


真優ちゃんは素直に頷いた。
まだ駆け引きや世間の裏表を知らない無垢な微笑みは私に影を落とす。


でも……素直な子は嫌いじゃない。




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