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恋セヨ乙女
第19章 新しい季節
地元に着いて家に帰る途中、鞠華さんのアパートに目を向ける。


鞠華さんの部屋がどれなのかは分からない。
けど最近になって二階の角部屋のカーテンが外されたことが妙に気になっていた。


あの日からパタリと会わなくなった鞠華さん。
空になったあの部屋と鞠華さんが重なって……



「…機会があったら先生に聞いてみよう」


知る術はそれしかない。
私が気にすることではないのかもしれない。


それでも一緒にケーキを食べたあの時間は私と鞠華さんの距離を縮めた。
私の中で鞠華さんは「先生の彼女」から「鞠華さん」に、一人の人間として存在するようになった。


後ろ髪を引かれるような気持ちを抱き鞠華さんのアパートを通りすぎる。


それから気になりながらも先生に聞く機会はなく時間は過ぎていった。


桜が散り若葉の季節になり、衣替えも終わった暑い夏休み。


受験勉強の合間に私と大地は相変わらずよく会っていた。
私の学校は姉妹大と推薦が進学の多くを占めていたので受験色は決して強くはなかった。


その中で過ごす私を見て大地は「頑張れ、もっと頑張れ」と事ある毎に叱咤した。


推薦と一般入試、どちらでいくか長らく迷っていた私だけど夏休みが終わるまでに心は決まった。


オープンキャンパスに参加して雰囲気やカリキュラムからA大に行きたいと思った。
高校受験の失敗から臆病になる自分もいたけれど、一般入試の大学を選んだ。


秋になりサナちゃんが育休から復帰しても吉野先生が引き続き担任でサナちゃんが副担に、進路に関しては進路指導の先生が全面的にバックアップしてくれていた。


進路指導の先生は私の評定から推薦を勧めたがったが吉野先生は「頑張れ」と、そう言ってくれた。その一言は心強く純粋に励みになった。



大地とのデートもしばらくはお預けしていたがクリスマスだけは息抜きを兼ね二人で過ごした。
……早いものであれから一年。
今年の私たちの雰囲気は去年みたいに浮かれたものではない。
本格的に受験を意識してから大地とはセックスはしていない。
私が拒んでいる訳でも話し合ったわけでもないけどお互い分かっていたんだと思う。


今は私も大地も優先すべき事があるって。






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