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恋セヨ乙女
第21章 浮気の境界線
「あっ……」


急にバッグを引っ張られてびっくりした。


「………」



女の子、この階にいたんだ。


お風呂上がりなのだろうか。
フワリと香る爽やかな彼女が一瞬気になったけど、気持ちはすぐ大地に向く。


ドアの前に立ちインターホンを押した。
いつもならすぐドアが開くのに今日は反応がない。


「………」


もう一度押すと少しの間を空けて大地が出た。


「真優…」


「……どうしたの?」


「ど、どうしたのって?」


「なんか変じゃない?」


大地の表情、顔色、対応の全てがいつもと違う。


「…そう?」


私とは決して目を合わせようとしないし。
大地に違和感を感じながら部屋に入ると何となく…


「………」


「ど、どうした?」


「何か空気が…」



違う。
大地は私の言葉に過剰なほど反応し、窓を開けた。


「入れ換えるか空気!」


「う、うん?」


「そうだ!シーツも洗うぞ!?」


「………洗うよ?」


「いや、真優は長旅の後だからゆっくり休め」


……おかしい。
絶対おかしい。


「いつもそんなこと言わないのに…」


「いや、いつも思ってた!」


「それにいつもは必ず一番にキスするのに…今日はないの?」


「真優……」


大地は嬉しそうに顔を綻ばせたがすぐに何かを思い出したように渋い顔になる。


「…夕べ飲みに行ってて風呂入ってねーから」


「別にいいよ」


「いや、ダメだ」


「………」


大地の家に来てまだ数分。
それなのに違和感は積もるばかりだ。
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