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恋セヨ乙女
第21章 浮気の境界線
さっきの女の子がふと過る。
「そういえばこの階女の子いたんだね」
「お、女?」
「そう、さっきすれ違ったの。ショートカットの」
「し、知らねーな。誰かの彼女じゃね?」
「………」
大地の目が泳ぐ。
大地に嘘なんてつかれたことないけど絶対嘘が上手いタイプじゃない。
いぶかしい気持ちで大地を見ていたら首筋の痣に気がついた。
ずっと感じていた違和感の理由。
背中を嫌な汗が伝い心臓が早鐘を打つ。
「……それどうしたの?」
「それ?」
「首の…」
大地が首をかしげる。
「……まるでキスマークみたいだよ…?」
その瞬間、大地がバッと首筋を押さえた。
私の疑惑が確信に変わった。
「………」
「…………」
「…蚊だろ」
「違うよね」
「蚊だ」
「………」
さっきすれ違ったあの子から湯上がりの匂いがしたことを思い出す。
もしそれを確認してしまえば私の中で断定される。
怖かった。
でも確認せずにはいられなくてバスルームへ走る。
「おい真優!」
大地の声を振り切り洗面所に入るとドアを開けるまでもなく分かってしまった。
誰かが使った後の湿気…あの子からしたのと同じシトラス系の爽やかな香り…
私の後ろに大地が立つ。
「…お風呂、入ってないんじゃなかったの?」
「………」
恐る恐るドアを開けると案の定、濡れた浴内。
そして目に飛び込んできたシャワー台の上の…
「ピアス…」
それを手に取り大地の目の前に掲げる。
「さっきのあの子でしょ?」
「………」
「シタの?」