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恋セヨ乙女
第21章 浮気の境界線
けれども教員採用試験の日、体調を崩し努力の甲斐も虚しく不合格となってしまった。


つくづくツイてない私だ。

私学を探すもなかなか空きもなく、近場で良さそうな学校をいくつか受けるも不合格に終わってしまう。


年が明けてやっと決まった就職先は家から離れた場所にある男子校。
これを機に大地から離れたかった私は独り暮らしを始めることにした。


……大地はといえば、あれからすぐアパートを引き払いこっちに戻って来ていた。
あれからも何度も会いたいと家に来ていたが、頑として私は会わなかった。


そのうち諦めたのか家に顔を出すこともなくなり…


聞いた話では無事地元企業での就職も決まったが配属されたのが関西の支社で春から関西に行ったという。




――――春になり、私は初めての独り暮らしを始める。
この一年は散々だった。
今日からまた気分も新たに頑張りたいとやっと片付いた部屋を見渡す。



「…そうだ、大家さんにご挨拶!」



大家さんの家は隣にあった。
お母さんに持たされた菓子折りを抱え大家さんの家のインターホンを押す。


キャンキャンキャン!


中から室内犬の声がして「はーい」と柔らかい声が聞こえた。



「あの、今日から206号室に入居しました鈴村と申します」


「あ、はーい。ちょっとお待ちくださいね」


それからすぐ玄関のドアが開く。
出てきたのはフワリとした雰囲気の女の人で…


腕の中にはモコモコのトイプードル。
尻尾をフリフリしているその子と目が合って思わず頬が緩んだ。



「あの、今日からお世話になります鈴村です。よろしくお願いします」


「大家の吉野です。わざわざご丁寧にありがとうございますね」


「あの、これ…」


「やだいいのよ!」


「いえ、ほんの気持ちなので」



……なんてね。本当はお母さんに口を酸っぱく持たされたのだけど。


大家さんは困った顔で「気を遣わないで」とお礼を言った。


それにしても可愛らしい人だな…
見た感じ30代前半くらいだろうか。


「困ったことがあったら何でも言ってくださいね」


「は、はい!」


大家さんの年を推測していたことが気まずくて軽く挙動不審。
誤魔化すようにニコニコ愛想を振り撒いて、それからすぐ部屋に戻った。


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