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恋セヨ乙女
第22章 新生活
心の荷物が一つ軽くなった。


「先生頼もしいですね」


「今さら気づいた?」


「…いいえ、高校の頃から知ってました」


高二の春、痴漢に遭ったあの日から…


「でも泣いてたのはそれだけが原因じゃないんだろ?」


「………」


「よっぽどの痛点だったみたいだな」


マユが匂いを嗅いで立ち止まる。
それに伴い私と先生も。


「……浮気されたんですよ」


「あいつが?」


「はい。彼の家に行ったら真っ最中で」


「修羅場だね」


「ははっ……男の人ってどうしてそうなんだろうな」


彼女が居ても他のヒトとセックスできる。


「皆が皆じゃないんじゃない?」


「…先生がそれ言いますか?」


茶化すように責めると先生はバツが悪そうに顔を背ける。
忘れられてた訳ではないらしいと思ったら少し嬉しかった。


「先生だって理由の一端なんですからね」


「俺?」


「そうですよ…」


全て大地が「初めて」なら結末は違うものだったのだろうか。
それとも私が大地に言わなければ…


「…そう。でも今があるなら満更間違いでもなかったのかもな」


物思いに耽っていると先生がポツリと何か呟いた。


「えっ?」


「いや、何でも…」


先生はポンと頭を撫でる。


「………」


相変わらず先生は心の隙間に入り込むのが上手いと思った。
それは先生が意図してる訳じゃなくて…きっとそういう人なんだと思う。


「先生モテたでしょ?」


「さあ?でも何で?」


「何故でしょう?」


何だそれ、と先生は少し笑って私たちはまた歩き出す。


少し気分が楽になった。
また少し先生が心の荷物を軽くしてくれた。


本当にこんな気持ちはいつ以来だろう。



私は前を向けるかもしれない…


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