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恋セヨ乙女
第23章 家庭訪問
翌日、先生と実家を出る。


「真優、頑張ってね」


「うん」


「ちゃんとご飯作りなさいよ」


「分かってるって」


「暇ができたらまた帰ってらっしゃい。先生もまた真優と来てくださいね」


「はい」


「魚送る」


「そ、それはいい」


「恭也君、真優を…よろしくお願いします」


お父さんは先生に頭を下げた。


「はい…」









車が動き出してもお父さんとお母さんはずっと手を振っていた。


「そんなに遠くに行くわけじゃないのに」


「心配なんだよ、娘の事が」


「もう子供じゃないのに…」


「子供じゃないから心配な部分もあるんじゃないか?」


「…そんなもんですかね」


「ずっと心配してたよ、お父さん…大地?アイツの事とか男子校で働いてることとか」


「……私には一言も言わないのに」



先生に半ば強引にお酒を勧めながら懸命に話すお父さんを思い出した。


初めて親元を離れて親のありがたさを知った気がした。
無口でたまに口を開けば魚の話しかしないあのお父さんが…


「ていうか随分仲良くなったんですね、“恭也君”なんて」


「あれは俺も初めて呼ばれた。“先生”じゃないってのも新鮮だな」


しみじみと先生が言う。



「…私だってまだ数回しか呼んだことないのに」


「何だよその対抗意識は」


先生は可笑しそうに左手を伸ばし、わしわしと頭を撫でた。


「わっ!」


「呼びたきゃ呼べば?じゃないとお父さんに越されるかもな」


からかうその顔はちょっと意地悪な「あの頃の先生」のままで…




……なんかそれ反則。
久しぶりに見たその顔に、私の胸はキュンと疼く。




「そうですか?では遠慮なく」


「どうぞどうぞ」


「…本当に呼んだら照れるくせに」


「さあ?」


先生は涼しい顔でとぼけていた。


……先生は私の事実際どう思っているのだろう。


悪くは思われてないにしても、今一つ確信は持てないでいる。


それに、「気になるヒト」の存在は私だって気になるわけで。


「………」


疼いたり痛んだり、私の胸は忙しい。






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