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恋セヨ乙女
第23章 家庭訪問
「クスン…」


雷で泣いたことなんてないのに家に入れないとはなんと心細いことだろう。


春雷は獲物を狙うライオンみたいに喉を鳴らしその機会を伺っている。


「鈴村さん…」


背後から声が掛かる。


「先生?」


傘をさした先生は一度着替えたのだろう。
ラフな服装になっているのに濡れていて、それはそのまま雨の強さを物語っている。


「鍵、どうしたの?」


「学校に忘れてきちゃった…」


「バカ…」


タオルを頭から被せ先生は小さく呟いた。


「母さんが帰ってくればスペアキーの場所が分かるはずなんだけど」


「先生のお母さん、お仕事ですか?」


「いや、アパート経営が仕事みたいなモンだから。…今日は韓流仲間と飲み会」


「好きなんですか、韓流が」


「韓国まで追っかけしにいくくらいね」


被せたタオルで先生が頭を拭いてくれる。


「とにかく家においで」


「…いいんですか?」


「いいも何もこのままじゃ風邪引くだろ」


「ありがとうございます…」


先生について隣のお家にお邪魔する。


「風呂、使って。良かったら洗濯機も」


「…すみません」


「タオルは棚にあるし着替えは後で持ってくから」


「はい」




お言葉に甘えて濡れた服を洗濯機に入れる。
思った以上に身体は冷えていて、シャワーが熱く感じられた。


「鈴村さん、着替えここにおいておくよ」



磨りガラス越しに先生が声を掛ける。



「はい」



全裸の私とドア一枚挟んで先生が向かい合う。
滲んで輪郭しか見えない姿が逆に厭らしく感じるのは…私がはしたないのだろうか。


「………」


先生が動かない。


「せ、先生?」


「磨りガラスって思った以上に見えるもんなんだな」


「!!!」


感慨深気な先生から身体を隠すとクスクス笑い声が聞こえた。


「まぁごゆっくり」


「………」


そして先生の姿が消えていく。


ほっとしたような残念なような…


「……ん?残念!?」


自分の思考に気づいたら恥ずかしくてたまらない。


私…期待してるんだろうか。


先生とそうなること…


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