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恋セヨ乙女
第24章 臨海合宿
生徒たちの歓声の中、私だけ違う感情を抱いている。


「――――っ」


さっきの先生の話も相まって涙が出そうになる。
でもこんなところで泣いたらいけない。
……曲なりにも私は教師なのだ。


こんなの笑い飛ばして叱ればいい。
こんなの……




自分の身体のラインを不特定多数に晒される女性としての恥ずかしさと自分の立場がせめぎ合う。



「………」



両手で口元を押さえた。
ヤバい。泣くかも…



その時濡れた身体に柔らかな布を羽織らされる。


驚いて振り向くと先生で、身体に掛けられたそれが先生のパーカーだと気づいた。


「部屋、戻りな」


先生は小さく呟いた。
先生を近くに感じたら安心して我慢していた涙が零れ、頷いて浜辺を足早に後にする。




生徒にしたら下心なんか皆無な無邪気な行動だったのかもしれない。
服が透けた事だってそこまで計算されたものではないのかもしれない。



私は大人だから、教師だから…
何十回も言い聞かせても心との折り合いはうまくつかなくて…



シャワーを浴びて服を着て、ベッドにゴロンと寝転がる。


サッパリすればまた違う悩みも浮かび上がってくるわけで…


「………」



泣いちゃったよ、みんなの前で。
どんな顔して出ていけばいいんだろう…



「はぁ…」



重い重いため息を吐き出すとドアが開き山田先生が入って来た。



「あら辛気臭いわね」


「………」


「…ま、しょうがないか」


「………」


ベッドで不貞腐れる私はつくづく子供だ。



「真優先生のカレシが凄い剣幕で怒ってたわよ」


「えっ…」


「怒るってよりキレてたわね。あれは指導じゃなく私情だわね思いっきり」


山田先生は呆れたように笑った。


「…そんなに可笑しいですか?」


「可笑しいわよ。あの吉野くんがブチ切れるなんて長く生きると面白いものが見れるもんだわね」


「………」



確かに想像はできないかも。
でも……


私は教師に向いてないのかもしれない、そんな先生の気持ちが嬉しいなんて。







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