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恋セヨ乙女
第25章 真優と恭也
「い、今までだって料理作ってくれた人くらい居たんでしょ?四人?」


「いや、四人目は真優」


「でも…初めてじゃないでしょ?」


「そうだな、二人くらいいたかな」



ハンバーグを焼きながら微妙な気持ちになった。



「料理作ってくれた歴代彼女全員に言ってたんじゃないですか?やだな…先生口うますぎ」


「………」



先生の過去…
元カノ達にも甘えたり意地悪したり、私に見せてくれたのと同じ顔を見せてきたのだろうか。


それは仕方ないことだけど想像するとやっぱり胸が苦しくて。



「…そうだよな」


一人胸を痛めているとポツリと先生が呟いた。



「買い物も料理も別に初めてな訳じゃないんだよな…」



「………」




すごく真面目な顔で何かを考え真っ直ぐ私を見る。



「真優」


「はい…」



チリチリ、チリチリ、フライパンの中でハンバーグの焼ける音がする。



「あのさ…」


フライパンと蓋の隙間から香ばしい肉の匂いが蒸気と共に漏れて換気扇に消えていく。


「すぐにとは…」



先生の空気がいつもと違う気がして気を取られていると、それが少し固そうなものへと変わっていて…


「ああっ!!」



我に返って慌てて火を消して蓋を開ける。



「あっ…良かった焦げなくて…。あ、先生話遮っちゃってすみません」



先生は呆気に取られたような顔で私を見ていたけれど、しばらくしたら困ったようにフッと笑う。



「…いや、まだ早いってことだよな」


「?」


「何でもない…出来たの運ぶ」


先生は何もなかったかのように立ち上がった。



「あ、じゃあ今お皿に…」



セットしてあった付け合わせの脇にハンバーグを乗せソースをかけると先生がテーブルに持って行く。


…さっきの話じゃないけれどこんな風に過ごしたのは私だけじゃないんだよね。


私だって人の事はいえないけど、自分を棚に上げて妬いてしまう。




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