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恋セヨ乙女
第26章 深まる二人
お母さんはまるで少女のような笑顔でなかなか辛いことを言う。


「…母さんしまってある皿出しといた方がいいんじゃないの?毎年足りないって騒ぐだろ?」


「あっ、そうね。恭也もたまには役に立つこと言うじゃない」


ポンと手を叩いてお母さんがキッチンに消えていく。


「じゃあ私もお手伝い…」


お母さんに釣られ立ち上がるとグッと先生に手を引かれた。


そして気付けは先生の膝に抱っこされていて。


「な、何の展開ですか!?」


「…いや、別に」


私を先生が抱きしめる。
8月の終わりに先生の熱は正直熱い。


「…もしかして気にしてるの?」


「別に」


「私、“何が”とか言ってないのに…」


「………」



でもアタリ。
どうやら先生はお母さんの言葉を気にしてるみたいで……



「モノには順序があるんだって」


「………」


「どの口が言うかなぁ…」


「この口」






先生がキスをする。



「ん、ダメ、お父さん見てる」


「目、瞑ってる」


「………」



こういうとこはホント強引。
でも…ごめんなさいお父さん、今だけ目を瞑っててください。



甘える先生に求められるまま少しの間身を任せる。



「本当にお手伝いしなきゃ」


「……嫁は大変だな」


「嫁…」


「真優の家にも挨拶に行かなきゃだよな、ちゃんと可愛がって面倒見ますから真優をくださいって」


「も、もう犬の子貰うんじゃないんだから…恭也さんの冗談分かりにくい」



私が怒ると先生は可笑しそうに笑っていた。


……冗談だよね、うん。
今すぐどうこうってわけじゃなくて、そんな未来があったとしてもまだまだ先の事だよね…


私まだ22だし…
付き合ってまだ日も浅いし…
就職もしたばっかだし…


そんなことをくどくど考える私はかなり先生に振り回されてるよな…って思う。



……ちゃんとした言葉を貰ったわけじゃないんだからと自分に言い聞かせ、実は期待してたんだと逆に思い知らされる。


張本人の先生は至って涼しい顔で。
二人の未来が見通せなくて悩むのは私だけとか…



「………」



なんだかなぁ……


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