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恋セヨ乙女
第26章 深まる二人
「私夕飯の準備してきますね」


この空気がなんとなく嫌でキッチンへ逃げ込んだ。
和室を出るとき先生の視線を感じたけど…




「真優ちゃん」


私の後を追ってきたのはお母さんで。


「疲れた?」


「いえ…」


「私は疲れたわよ」


笑いながらお母さんは肩を叩く。


「…恭也さんが言ってました。小さい頃家にはよく生徒さんが来てたって」


「そうね」


「兄弟みたいに遊んでもらって楽しかったけどお母さんは大変だったろうって」


「…そうね」


お母さんの目が懐かしいものを思い出すように細められた。



「本当はね、恭也が先生になりたいって言ったとき反対だったの。あの子は父親の背中を追ってたから…もし恭也が家庭を持った時皺寄せが来るのは家族だもの」


「………」


「主人は私とのことが問題になって学校を辞めてね。再就職したのがあの子達の高校で…あまり評判が良くなかったのよ、その高校」


先生のお父さん…
遺影のお父さんに先生の話が重なり私なりのお父さんが形作られる。


「恭也は生まれるし家は寺子屋になるし大変だったわ、当時はね」



「………」



「でも大変な事もしてみるものね。今でもこんなに主人を慕ってもらえて…」


「素敵な先生だったんですね」


「そうよー。恭也の100倍素敵よ」


「恭也さんだって素敵ですよ?」



二人でクスクス笑い合って夕飯のおいなりさんを詰める。



「同じ教師でも主人と恭也は全然違うわ。…最も前の学校はお嬢さん学校だったし今の学校は整った進学校だから恵まれてるのよね」


「環境ですか?」


「一概にとは言わないけど」


「でも女子校は懲り懲りみたいですよ」


「未来のお嫁さん見つけられたんだからそれなりの報酬よ」


うんうん、とお母さんが頷く。


「さっきのマキちゃんも悪い子じゃないの」


「……」


「高校一年で彼氏との間に子供ができてね、…結局お腹が大きくなってから逃げちゃったのよ彼」


「えっ…」


「マキちゃんの家はお母さんがいなくてお父さんは大反対で…学校辞めて16の子が子育てしながら働いて」


「………」


「結構依存傾向のある子なのよね。病気が発覚してからも主人は最後まで気にしてたわ」


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