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恋セヨ乙女
第27章 温泉へ行こう!
自販機は部屋から離れた一階にある。


「小銭小銭…あれ?」


お財布の小銭を探していると肩越しにチャリンとお金が投入され…



「お客様、どーぞお好きなものを」


「大友くん!」


驚いて振り向くと大友くんだった。


「えっ…でも…」


焦せ焦せする私に大友くんが急かす。


「ホラ早くしないとお金出ちゃう」


「あっ…あわわ…」


急かされるままミネラルウオーターを押すと「まいどあり」と大友くん。


「大友くんがお金出してくれたんじゃない。…待っててね、今お金崩して…」


「あ、いい。可愛い真優ちゃんに折角だから奢らせて?」


「もう…相変わらずなんだから」


ハハッと二人で笑い合う。



「びっくりしたよ。大友くん旅館で働いてたんだね」


「そう、ここ俺の実家なの」


「へぇ…」


「本当は会社内定してたんだけどさ、なんつーか…彼女に子供ができて」


恥ずかしそうに大友くんが話し出す。


「ちょっと予定より早いんだけど家に入ることにした。サラリーマンの初任給じゃ奥さんと子供食べさせていくの大変だろ?」


「じゃあゆくゆくは支配人?旅館とか大友くんに合ってるね」


「そう?今は一番下っ端から絶賛見習い中なんだけどね」


私と大友くんは自販機の前にあるソファに座る。


「お子さんはもう生まれたの?」


「うん、3ヶ月になる」


大友くんがスマホを出して待受を私に見せる。


「可愛い!女の子?」


「そう、ユメカっていうんだ。夢が叶うって書くの」


「願いが込められた素敵な名前だね」


大友くんは嬉しそうにはにかんで、待受の我が子を見る。
その顔はすっかりパパの顔で見ていて暖かい気持ちになった。


「真優ちゃん今日一緒に来てる人は彼氏?」


「そう…」


「だよな、新しい彼ができてもおかしくないよな」


大友くんはどこか寂しそうに呟いた。
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