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恋セヨ乙女
第28章 花の嵐
「お父さんは会社の同僚でね、お母さんはその前にお付き合いしてた人が居たんだけどいろいろあって別れて。そんな時お父さんに“付き合ってください”って言われたの」


「へー」


「でもお母さん断ったのよ。お父さんってなんか地味でしょ?しかも魚の話しかしないし…でも断っても断っても何度も言うのよ。だからね、根負けして付き合ったの。“お友だちからなら”ってね」


「意外と情熱的なんだね、お父さん」


「そしたら一ヶ月後よ。突然街の真ん中で“僕は君を幸せにできないかもしれないけど君の笑顔で僕は幸せになれる!精一杯君を愛しますから結婚してください!!”なんて言うの。もうお母さん恥ずかしくって!」



そこはグイグイ“幸せにする”と言って欲しいのが女心。
でもその不器用さがお父さんらしい。





「…カッコいいですね」


「やだ先生、お世辞なんていいのよ」




フフッとお母さんが笑うと先生は真面目に呟いた。


「いや、カッコいいですよ」


「………」




その時、玄関の開く音がした。



「あっ、帰ってきたわよお父さん」


その言葉に反射的にだろう、先生の背筋が伸びる。


「…いらっしゃい」


「お邪魔してます」


いつもより堅い二人の挨拶にお母さんが笑った。


「やだお父さんも緊張してるわ」


「…あのね、お父さん。今日は聞いてほしいことがあるの」


「…トイレに行ってくる」





「……逃げたわね」


お母さんがボソリと呟いた言葉の通り、お父さんは理由をつけては家中をウロウロし、ようやく私たちと向き合ってくれたのは帰宅してから20分も経ってからの事だった。





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