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恋セヨ乙女
第12章 嫉妬
「よう」


地元の駅を出ると大地がいた。


「…どうしたの?」


正直びっくりした。
もしかして早速昨日の返事だろうか。
いささか構える私に大地はいきなりデコピン。


「~~っ痛ーー!」


「警戒してんじゃねーよバーカ」


「む、バカって言った方がバカなんだからね」


「おーそうか。県一番の偏差値を誇る学校の生徒にバカとはよく言ったもんだな」


いつもと変わらない口の悪さと意地悪な笑み。
そんな大地にホッとしたのは正直な気持ちだ。


「……で、どうしてあんなとこに?」


大地と歩きながら問うと事もなさげに大地は言った。


「心配だったんだよ」


「?」


「痴漢、遭ったんだろ」


真っ直ぐ前を見る大地の表情はよく分からない。
それでも声色からその言葉に嘘がないことがうかがえた。


「さすがにおまえの学校まで行くには時間的に無理だからな」


「それで地元の駅?」


「そ。その能天気な顔見れれば何もなかったって分かって安心だろ」



言葉と裏腹にいつも優しい大地。
それはいつも変わらない、子供の頃からずっとそうだった。



「ありがと」


きっと大地を好きになればすごく幸せなんだと思う。
大地は横目で私をみてわずかに笑った。


「夕べは暗かったから分かんなかったけど結構クッキリついてたんだな」


「…そうだよ」


非難の色を含ませて呟くと大地がキスマークに触れた。
今日二度目の指先は背筋を走り抜けるものではなく、どこか甘くて胸の奥を掴まれるような感覚だった。


「大変だったんだから、学校で」


「問い詰められた?」


「そうだよ」


悪かったな、と大地は何故か嬉しそうに見える。
でもすぐに真顔になり核心に触れたのは大地からだった。


「昨日の事だけど」


「…うん」


「返事はまだいいから」


「でも…」


「分かるんだよ、真優の事は大体な」


思わず立ち止まると数歩歩いて大地も止まる。



「真優が俺の方ちゃんと見るまで待つから」






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