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第17章 千鶴～相撲部屋の美しき女将

若葉へ

鉄平です。その後元気にやってますか。

今、巡業で静岡にいます。

この世界に入ってもうすぐ1年。

相変わらずけいこ、けいこの毎日だ。

おれも少しは相撲取りらしくなってきたのかな。

身長は175センチ、体重はもうすぐ90キロ。

まだまだ成長してるよ。

若葉も驚くだろうな。

女将さんにも、浦松は大きくなったわね、ってこの前言われたんだ。

そうそう、春場所はぎりぎりだけど勝ち越しすることができたよ。

来場所はいよいよ三段目にあがれそうだ！

中学卒業1年でこの昇進ペースは悪くないらしい。

部屋の厳しいけいこのおかげだと思ってます。

親方にはいつもしかられてばかり。

でも、親方はおれのことを思ってくれてるんだ、っていつも、自分に言い聞かせてるよ。

親方に言われて、今は速攻を磨いているところ。

まだまだ土俵にあがればおれは小さいからね。

子供の頃得意だった突き押しも簡単に通じない。

大きな相手の中に飛び込んで、すばやくまわしをとって、頭をつける。

くらいついて、下半身でふんばって、横から攻めて、投げるんだ。

こんなこと言っても若葉にはわからないかな。

とにかく、自分の相撲はこれだって言える型を今、完成させようとしてる。

兄弟子たちからのいやがらせもあいかわらずだよ。

でも、少しずつ俺の番付があがってきてるから、見る目が変わってきたようにも感じるんだ。

この部屋で一番年下だけど、もう番付ではそうじゃないからね。

年齢は関係ない世界。

強いか弱いかで上下関係が決まるんだ。

以前、女将さんもそう言ってくれた。

兄弟子はいつまでも兄弟子だから、番付が上になったらすべて逆転ってわけじゃないけど、でも早く追い越したいな。

前の手紙で柿本さんっていやな兄弟子がいるって書いただろう。

性格の悪いところは相変わらずだけど、ここ半年ぐらい、あの人も少しずつ強くなってきてね。

おれに負けないようにけいこに励んだからじゃないかって思うけど（笑）。

今は幕下だから、まだまだおれよりは上位なんだ。

早く追い越したいな。

そろそろ寝ます。

たまに、故郷のことを思い出します。

みんな元気かな。

早く関取になって、若葉に会いにいきたい。

また手紙書くよ。

鉄平